別人種ハンサム君の来訪

某証券会社より会社へ電話があった。自分が取り次ぐと、若い男性のさわやかな声で年始の挨拶がてら営業にうかがいたいという。

年始の挨拶といっても証券会社とは何の関係も築いていないし、営業といっても株と投資にはまるで興味がない、というか資金がないというほうが正しい。なので、そういうお話でしたら結構ですと断ろうとすると、「それだけではなくマネジメント関連のお手伝いもできます!」とえらく自信満々に言われた。

証券会社がマネジメントの手伝い?具体的に何をするのだろうと少しばかりの興味がわいたので、会うことにした。いつもなら断るけれども、この時期は暇なので、暇すぎるので、まあいいか、となってしまった。

アポイント当日、証券会社の若い男性が来社した。顔が小さく目は切れ長で若いながらもスーツもびしっと決まり足も長い。これはめちゃくちゃモテるだろうなというくらいハンサムだった。

名刺交換をすませると、若い男性は「自分はこういうものです。暇なときでも読んでおいてください!」と一枚の紙を渡された。そこには自己紹介がつらつらと書かれていた。さらっと読むと新卒ホヤホヤで、この地域に少し前に配属されたばかりらしい。都内の一流大学を卒業し、スキーが得意でインストラクターの免許も持っている。趣味はなんだったか忘れた。

いやいや、ハンサムな上にスタイルもよく一流大学でスキーが得意ですか。おまけに一流企業に就職ということでいわゆる勝ち組じゃないですか。三流大学をぎりぎり卒業し、2年ほど就職浪人をし、やっとの思い出で入社した会社は中小企業で給料も少ない自分とはまったく対照的じゃないですか。

しかしまあ、若いし営業経験もあまりないからかもしれないけれど、こういう自己紹介文みたいなものを渡す必要があるのかなとも思う。会社からの支持かもしれないが、こんな中小企業へ営業に来てこのような紙を出された日には、営業相手はおそらく嫉妬に狂って話にならないんじゃないだろうか。中小企業に君のような人間なんていないと思うぞ。いかにもわたしはあなたたちとは人種が違う、わははははは!よくおぼえておけ!というような威圧を受けてしまい、営業にならないと思うぞ。と、自己紹介文をさらっと1分くらい読んだ感想がそれだった。

ただ、今回、若い男性(これからは別人種ハンサム君とよぶ)が自分と会ったことで助かったのは、自分にはなぜかしら「嫉妬心」というものがほとんどないということだ。性格なのか何なのか、学歴にも興味がないし、一流企業がどうのこうのもあまり気にしない。美人な彼女がいようが金を持っていようがまったくどうでもいい。いわゆる何事にも淡白なのだと思う。

なので自己紹介文を読んでもふ~んで終わってしまった。そして雑談もそこそこに別人種ハンサム君から営業内容を聞いた。大体は想像がついていたがマネジメントのお手伝いとは具体的に「決算対策、M&A、事業承継、節税アドバイスなど」ということだ。

別人種ハンサム君は「このようなご内容で何かお困りのことはありませんか?お手伝いできることはありませんか?」と聞いてきた。「はっきりいってない!」と言おうとしたが、「まあ、今のところはなにもないねえ」とやんわりとお断りした。

別人種ハンサム君は「そうですか、もし何かあればご相談くださいと!」と特に残念そうでもなく明るく返答してくれた。しかし、ひとつ気になったことがあるので聞いてみた。「いま提示したような手伝いをすることで御社ってどこから利益が出るの?」

すると「わたしたちは直接お手伝いによって利益を得るわけではありません。たとえば事業承継や節税などは税金対策としてよく保険が使われます。そこでわたしたちは御社に見合うような保険会社をみつけてきてご紹介します。そして、わたしたちは紹介料という形で保険会社さんからいただきます。ようはあくまで無料でアドバイザー的な立場で御社をお助けし、わたしたちは紹介料といった形で利益を得ます」

と、さすがは別人種ハンサム君だ、立石に水のごとく流暢にお答えいただいた。あくまで無料にてアドバイザー的な立場で相談に乗り、その会社にあった保険会社なり、M&Aなら合併に見合った会社なりを見つけてきて、あくまで紹介料という形でしか利益を得ないということだ。なんか不動産屋さんみたいだなと思ったけれども、そんなもんかなとも思った。

まあしかし、うちみたい中小企業なんぞには、某大手証券会社様にお手伝いいただけることなどおこがましくて頼めないし、頼むこともない。正直無料ほど怖いこともないと心の中で思いながら「へえ~そうなんだ、証券会社さんもいろいろやってるんだね~」とその場を濁しておいた。

「はい!もし何かご興味がおありでしたら何なりとお申し付けください!本日はありがとうございました!またお伺いします!」と素敵な笑顔で別人種ハンサム君は帰っていった。

え?またお伺いします?また来るの?まあ、社交辞令だとは思うがこんな中小企業にまで足を運ばなければならないなんて大変なんだなと同情しつつ、でも別人種なんだよなと感心した一日だった。