ばあちゃんへのバレンタインチョコを食べたら息子がキレた日

2月も終わりに近づくころ、仕事が終わって帰宅すると小学校低学年の息子が小さな声で「冷蔵庫に入っていたチョコレート食べた?」と聞いてきた。わたしは何のことかとよく考えてみると、確かに昨日の夜に何かを食べたような気がする。そうだ、ひとりで酒を飲んで腹が減ったので冷蔵庫を物色したけれど結局つまみらしきものがなく、しかたがないので小さな袋に入っていたチョコレートらしきものを食べた、ような記憶がある。

「あ、もしかしたら昨日の夜食べたかも」とわたしが言うと、息子は今まで見せたことがないものすごい切ない顔をしたかと思ったら、「うわああああん」と泣き出してしまった。ひさびさに大泣きする息子を見て、わたしはびっくりすると同時になぜ泣く?とものすごく不思議でしょうがなかった。すると息子は、「あれ、ばあちゃんにあげるバレンタインチョコなのにいいいい」という。え?ばあちゃんにあげるバレンタインチョコ?

そういえば思い出した。たしかバレンタインデーの2日前くらいに、娘が友達とバレンタインチョコを交換するからといって、家で手作りチョコレートを作っていた。「なんで同姓同士でバレンタインチョコの交換なんかする必要がある?それも手作りで。好きな男の子にあげろお!」とからかっていた記憶がある。

そして、その様子を見ていた息子が自分も作りたいといって、嫁さんと手作りチョコレートを作ったのだった。自分で食べるために作るのかと思いきや、なぜかわからないがばあちゃんにあげるということで作ったらしい。ということを思い出した。

しかし!バレンタインデーが終わって2週間も経つのに、まさかいまだにバレンタインチョコレートが冷蔵庫に入っているなんて、思いもしなかった。たしかに誰のチョコレートか確かめずに食べた私が悪い。しかし、いつも夜になったら、冷蔵庫を開けて酒のつまみを物色する私を知っている皆さんなのだから、何かしら注意をしないほうが悪いと思う。といったら怒られるからいわないけど、食べてしまったものは仕方がない。

それで泣き叫ぶ息子を横目に困ったわたしは嫁さんに話を聞くと、じつは息子が学校から帰ってくると手作りチョコレートがなくなっていることに気づいて、ものすごく泣きながら暴れたらしい。まあ、犯人は一人しかいないわけだから、嫁さんに八つ当たりしたのだろう。しかたなく嫁さんは息子をなだめるために、結局明日、ふたたびチョコレートを作ると約束した。

やっとのことで息子の怒りは収まったけれど、嫁さんは「お父さんが帰ってきても、もう、何も言っちゃだめだよ。気づいてないから」と息子に話をしたという。しかし、息子は真相を突き止めたかったのだろう。ただ、本当にお父さんが食べたのか確かめたかったので聞くだけ聞いたのだけれど、わたしが「食べた」と平然と言ったものだからものすごく腹がたってまたまた泣いたというわけだ。

まあ、わたしは謝るしかないので「ごめんごめん」と言ったけれど、1時間くらいはぐすぐす泣いていた。それから、食べた私が悪いのだからと反省しながら風呂に入ったのだが、よくよく考えると少し不思議な感じがする。

誰も私にバレンタインチョコレートをくれていない!

そう、娘も息子も手作りチョコをたくさん作ったくせに、私にひとつもくれていない。また、たしか、いっしょに嫁さんも作っていたはずだ。それなのに大事な大事な大黒柱である旦那様が、嫁さんからもチョコレートをもらっていない。目の前に一番あげるべき存在を無視して、友達だのばあちゃんだの意味がわからない。なんなんだこの仕打ちは!

と、風呂の中で、なぜだかわからないけどこちらがふつふつと怒りがわいてきた。確かに息子にはすごく悪いことをしたと思ったけれど、それはお父さんのバレンタインチョコなんだ!と勝手に決め付けて自分で自分を許し、息子への罪悪感を払拭した。やれやれ。