労働基準監督署が社員を密告者に仕立て上げようとする横暴!

あるとき、中途入社半年目の男性社員Kさんから話があるということで、会議室にて話を聞く。なんでも「有給休暇を取りたい」とのこと。そして、「じつは労働基準監督署の担当の人から取るように言われまして…。」と言う。え?労働基準監督署が有給休暇を取れって?

Kさんの前職は超絶ブラック企業の広告代理店で、残業代は支払われないし、給料の遅延は毎度のことだしということで労働環境は最悪だったらしい。そして、とうとう社長が行方をくらまし、実質的な開店休業状態となった。残った社員たちで何とかやりくりしていたそうだが、Kさんは耐えられなくなり退職した。

その後、Kさんは賃金未払いなどの相談事で労働基準監督署にお世話になる。現在もまだ前職に関する問題で労働基準監督署を定期的に訪ねているという。そして最近の面談の時に担当者から「今の会社、入社して半年たったでしょ?有給休暇はもらった?ちゃんともらわないとだめだよ」と言われたらしい。

有給休暇を取り、証拠を見せろ?

Kさんとしては別に有給休暇を取る必要はなかったので、その旨を担当者に言うと、「もしかして、直接会社に言うのはいやですか?もしあれでしたら、うち(労働基準監督署)から言いましょうか?」と言われたという。困ったKさんはそのとき「大丈夫です、取るときは自分で言います」とその場を切り抜けようとしたのだけど、担当者はしつこく、こう言った。「それなら有給休暇を取ったという証明が欲しいから4月の給与明細で確認させて!」と、あくまで有給休暇を取れという。そして、あろうことか有給休暇を取ったという証拠まで出せというのだ。

ものすごく困ってしまったKさんは、そういう事情をすべて話してくれた。はっきりいうとKさんは有給休暇が欲しくてこんな嘘をついているわけでないことはすぐわかる。入社してからというもの、はじめての業界にもかかわらず一生懸命に仕事をし、すぐにみんなと打ち解けて仲良くできる人柄と素直さを持った人だ。そんなバカげた嘘をつく必要はない。本当に休みが欲しければ正直にいう人だ。

しかし労働基準監督署はなぜKさんに有給休暇を取らせようとしているのだろう。少し疑問に思った。するとKさんは心当たりがあるという。前の会社でも自分ではないが、ある社員が有給休暇を取りたいと言って断られたらしい。それを労働基準監督署に報告したらすぐに監査が入り、全員強制的に有給休暇を取らされたという。

密告者に仕立て上げる?!

そして今回、何度も労働基準監督署に面談に来ていたKさんをスパイめいたものに仕立て上げ、ほんとうにうちの会社が有給を取得させる会社なのか、確かめようとしているのではないか?もし、Kさんが取りたいといってダメだといわれたとしたら、すぐに監査が入り、前の会社と同じようなことをしようとしているのではないか。つまり、労働基準監督署の監査実績というか点数稼ぎというか、そのための密告者めいたものに自分は指定されたのかもしれないとKさんは言う。

そんな話は聞いたことがなかったのでにわかには信じ難かった。しかし、そう思わせるような労働基準監督署の言い分ではある。有給休暇を取らせてもらってその証拠を見せろなど、ふつうは言わないだろう。

とりあえず、Kさんに関しては3日間だけ有給休暇を使わせてほしいということなので、もちろん承諾する。しかしながら、だんだんと腹が立ってきた。善良なKさんを使ってなんてことするんだと、労働基準監督署に対して抗議してやろうかと思った。ただ、まだ前職の問題が解決していないので労働基準監督署とKさんの関係は続いているから、事を荒立てると迷惑がかかると思ったのでこの場はこれで納めた。

労働基準監督署は人の心がわからないのか?

しかしだ。労働基準監督署は2つの意味でKさんを愚弄している。まず第一に、有給休暇は個人が取得したい時に取るべきもので、労働基準監督署が取れなどという権利はないだろう。取りたくものない有給休暇を消化させたあと、もし実際にKさんが有給休暇が必要になったらどうするつもりなのか?また、取ったかどうかは会社が報告すべきもので、なぜ個人が取ったかどうかの証拠を出さなければならないのか。意味が分からない。

そして一番Kさんに迷惑をかけていることは、Kさんはまだ入社して半年だ。もちろん有給休暇が10日間付くので有給休暇を取ることは問題ない。しかし、常識的に考えて、入社したばかりの人間が会社に対して堂々と有給休暇をとらせてくれとはなかなか言いづらいだろう。それに、取りたくもない有給休暇を申請するなどどれだけの勇気がいると思っているのか。そういう常識的というか人の機微が分かっているのだろうか労働基準監督署は。

Kさんは本当に困り果ててわたしに相談してくれた。そういう事情をいわずに有給休暇を申請すればよかったのだけれど、Kさんは教えてくれた。おそらくKさんはそんな密告者めいたことはしたくなかったのだろう。あえてすべて話すことで、うちと労働基準監督署がもめないようにとの気づかいがわかる。

ともあれ、これは労働基準監督署の横暴だ。善良な人間を知らずしらずのうちに密告者にしようというのだから。世の中の中小企業の皆さんも気を付けたほうがいい。どこで労働基準監督署の仕込んだ密告者がいるかわからない。