隠れたパワハラがあったことを知った日、社長はどうすべきなのか?

信じがたいことだが、わが社で「パワハラ」があった。パワーハラスメント、いわゆる社員による社員への暴力行為である。今回は暴力といっても物理的なものではなく、精神的な要素が大きい。

ことの発端は女性パート従業員であるMさんが「今日限りでやめさせてほしい」と直接、社長である私に言ってきたことだ。Mさんは社歴も長く、同じ職場のみんなとライングループを作るくらいに仲良くやっていたので、ものすごく驚いた。そして会社を辞めたい理由を聞くとそこには私が知らない驚愕の事実があったのである。

ある作業場にHさんという女性社員がいて副リーダをしてもらっている。その作業場でMさんも働いているのだが、先週、事件が起こる。Mさんは、シフトによる作業の交代時間になったとき、持ち場の作業がまだ終わっていなかったので続けて仕事をしていたらしい。一応、現場で交代する予定の人に了解をとって何かあれば連絡してほしいと伝えていた。

すると数分後、副リーダーであるHさんがすごい形相をしてMさんの所へ来た。「いったいあなたは何をしているのですか!」と言われたので、Mさんは事情を説明すると、「私は聞いていません!すぐ作業をやめてください!」と怒鳴って、いきなり備品などが載っているカート片付けようとして思いっきり振り回したらしい。そしたら備品が飛び散ってしまったのだけれど、そのあとHさんがますますヒートアップして備品を投げつけるようにカートに戻したという。

その行動を見たMさんは、ものすごくびっくりしたと同時にさすがに腹が立った。「これからは何ごともHさんに報告すればいいんですね!」とMさんが怒るように言うと、Hさんは「もういいです!好きにしてください!」と怒鳴り返したらしい。まあ、ある意味ケンカである。

だがMさんからその話を聞いた時、こういうことは日常茶飯事だという。またMさんに対してだけではなく、その作業場で働く人たちの多くが同じようなパワハラを受けているというのだ。最近では社員になったばかりのKさんがターゲットとなりよく怒られているという。

それでHさんの怒りというのがほとんど八つ当たりに近く、言われた本人にとっては理不尽極まりない理由で怒られるという。たとえば帰りのタイムカードを押すとき、エプロンを外して手に持っていただけで怒られたとか、別の作業場の人の頼まれごとを少しやっただけで「持ち場を離れるな!」と怒られたり、理由は様々だけれどそこまで怒るようなことではないことばかりだ。

ではなぜ今までHさんのパワハラ行為が私たち幹部にわからなかったかというと、まずは幹部の前と自分より立場が下の者との前では態度が豹変するらしい。たしかに私はHさんが怒っているところをみたことがない。また、パワハラを受けている人たちは、みんなしかたないよね、我慢しようねという感じで団結しており、誰も幹部に忠告しなかったことも挙げられる。そして、Hさんのパワハラが原因でやめた人間は数多くいるらしいが、みな黙って辞めていった。

そういう話を聞いて私はア然としてしまった。まさかあのHさんがパワハラ野郎だったとは、まったく気づかなかった。それも何年にもわたりわからなかったのだ。そして猛烈に腹が立って仕方がなくなった。

Mさんの仕事を辞めるという決意は固かった。しかし、長年働いてくれてみんなとも仲良くて仕事も申し分ないMさんに辞められると困る。また、みんなの動揺も大変なものになるだろう。なのでここは私がいったん話を持ち帰り、直接Hさんに話をするからちょっと辞めるのは待ってほしいといって今にいたる。

この話を聞いたのが3日前、土日を挟んで今日はHさんが出勤してくる日だ。わたしは他の地域の部署にいるので、これからHさんの部署へ行く。さて、どのように話をしたものか今すごく悩んでいるところだ。

パワハラをしていた社員に言うべきこと

一通りMさんから聞いた話をHさんにして、「あなたはパワハラ野郎だからクビ!」にしてもよかった。ただし仕事はよくしていたし、パワハラがあったことは知らなかったけれどリーダーがいないときは現場をよく切り盛りしていた。こちらの勝手な都合であるが、人がいないのも事実だ。なので以下のように話をしてもう一度チャンスを与えようかと思う。本人が理解すればだけれども。

まず「Mさんが仕事を辞めたいといってきた。理由はわかるか?」と聞く。おそらくHさんはこの前の出来事を思い出しそのことを言うだろう。しかしそれが「辞める本当の理由なのか?人はすごい自己防衛本能が強い。長年慣れ親しんできた職場をそのような理不尽な行為が1回あっただけで辞めると思うか?」という話の流れから、過去にもいろいろパワハラがありMさんは今回我慢の限界にきて辞めたのだ、ということをいう。

たとえとして、水道の蛇口からぽたぽたと落ちてくる水滴がコップにたまっていくように、あなたのパワハラ行為がMさんの鬱積として溜まっていく。そしてあふれ出てしまった。というより、あなたがコップを破壊したのだ。だからあなたは過去にもそのような行為をしたことがあるだろう?という感じで聞いていこうと思う。また、それはMさんに限らず、他の人にも同じようなことをしたのだろうということを確かめる。

パワハラとは犯罪であり、あなたがいかように思おうとも、相手がパワハラされたと思ったらそれはパワハラなのだ。訴えられたら会社もあなたも必ず負ける。それぐらいのことをあなたはしたのだ。

本当はどうでもいいような人間がそのようなことをしていたら、即解雇にするところだけれど、あなたは長年会社の仕事に貢献してきた。また、女だてらに現場を取り仕切ってももらっている。そして、今回のようなパワハラ行為が以前にもあったことなど全然知らなかった私にも責任がある。

ということでこれから言う条件に納得できれば、このまま働いてもらいたい。まず、あなたが良かれと思っていた行為は、パワハラであったことを自覚し反省してほしい。そして、前回、Mさんにやった行為はある意味、物理的な暴力行為に匹敵するくらいのパワハラだ。だからMさんには、きっちりと謝罪してもらいたい。また、おなじようにみんなにも謝罪してほしい。あなたにパワハラされたことがない人でも、そのようなことがあったことを知って動揺している人もいる。ようは職場のみんなに迷惑をかけたのだから謝るべきだ。

そして今後はパワハラ行為と思われるようなことは一切しない。もし、少しでも私の耳にそのような行為があったことが入ってきたら、即日解雇する。パワハラ行為での解雇ということで「懲戒解雇」とする。以上のことに納得できるようであれば、謝罪はすぐに実行すること。

というような感じで話をしに行こうと思う。まあ、一方的に被害者の方からのみ話を聞くというのも公平ではないので、もちろんHさんの思いというか、話は聞く。

話の途中で「そんなこと言われるくらいならやめるわ!!」とブチ切れて出ていくかもしれない。どのようなことがおこるかはわからい。また、Mさんが納得するかもわからない。一回こじれた人間関係はなかなか修復は難しいだろうから。

いやはや損な役回りではあるけれど、状況を立て直すには私が出ていくしかないのも確かだ。やれやれ。ということで、暇があればこの続きをいつか書きたいと思う。